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急に目の前が眩しくなって、策太の意識は夢の世界から急浮上してうつつへと戻ってきた。ママがなんか言っている。ぼんやりとした頭ではキャッチしきれない言葉達をなんとか拾い上げる。
「もう! 夕方には雨が降るから、洗濯物は早めに干して早めに取り込んでねってママ言ったでしょう? 全然ひとの言う事聞いてないんだから。ほら出かけるよ。策ちゃんは洗濯かご持って! コインランドリーとお買い物、行くよ」
「わかったよ」
ぶすくれ顔のまま、策太はピョンっと立ち上がった。
「井瀬さん家に碁を教わりに行ったんだって?」
近くのショッピングモールに向かう車内で、ママが策太に聞いた。
「なんで知ってんだよ」
「俊哉くんのママからLINEが来たの」
策太は運転席のママの横顔を見た。普通にご機嫌そうだ。策太だけ置き去りにしてあとの皆はとっとと逃げたことは、俊哉は親に言わなかったらしい。
「今度は囲碁をがんばるの? でも策ちゃんいつからそんなに囲碁が好きになったの。先生から読めって貸してもらった教本だって、ちっとも読んでないのに」
「うるせー」
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