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通話は母から一方的に切られた。よろしくって。いよいよ断るという選択肢がなくなってしまった。母が絡んでいなければ「やっぱりゴメン」と断ろうと思ったのに。そもそもなんで自分は策太に「別にいいけど」なんて言ってしまったのか。寝起きとはいえうっかりが過ぎるのではないか。まさか母の熱いボランティア魂が実は自分にも受け継がれてしまっているのか。それとも祖父の教えの影響が今ごろ出たのだろうか?  「母ちゃんに似たよりは祖父ちゃんの影響のがいいな」 晴海はボソッとつぶやいて、仏間に碁盤を取りに行った。 リビングに戻ってきた晴海は囲碁道具を抱えていた。さっきまではヨレヨレのTシャツとクタクタなスウェットパンツを着ていたが、ごく短い待ち時間のあいだに着替えていて、今は浮世絵の描かれた白いTシャツにカーキ色のカーゴパンツという格好だ。整髪料のシトラスの香りもあいまって、いかにも寝起きといった感じだった先ほどよりキリッとして見える。晴海は床に荷物を置くと、 「ほら、これ使いな」
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