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でも囲碁歴自体は、小四から始めて丸二年ほどだ。昇級は遅い方かもしれない。だがそれはサッカークラブとかけ持ちで習っていたせいだった。週末は囲碁の教室や大会とサッカーの試合がかぶりがちで、当然策太は団体競技のサッカーの方を優先した。つまり囲碁教室や大会の級位認定戦に出場する機会が少なかったからなかなか昇級しないというだけで、いざ試合に出ればそれなりに勝ってきた。だから、 「とりあえず九子局で打ってみようか」 そう持ちかけられて策太はムッとした。九子局というのは盤上の格子の交点に打たれた「星」と呼ばれる九つの点すべてに黒石を置いた状態からスタートするという対局だ。対局する者のうち弱い方が黒を持ち強い方が白を持つ。そして初手は白から打つ。初心者が上手(うわて)に稽古をつけてもらう時のハンデ戦だ。しかし自分はそこまでハンデをもらわなければいけないほどヘタクソではないと策太は思ったのだ。 「なに、不満そうじゃん」 「……そんなことないです」
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