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「ふーん、まあいいや。まず、碁を教えてあげる代わりにいくつか約束してね。一つ目は、碁盤や碁石に触る時は手をきれいにしてからね。二つ目は、お願いしますとありがとうございましたはちゃんと言おうねってこと。そして三つ目は、対局に負けても感情を表に出さないってこと。怒って暴言吐いたり物に当たったりとかはもってのほかだし、泣いたりもなるべくしないでね」 なんだ。それなら囲碁教室でも言われていることだし余裕で守れる。ただ、三つ目の感情を表に出さないというのにはちょっと引っかかる。それだって自分はちゃんと守れるつもりでいるけれど、表情と態度に不機嫌なのが出ていると言われることがあるのだ。脅すつもりはなかったのに、大会で対局相手の女の子に恐いと泣かれてしまったこともある。策太にはそんなの見る人によることだと思えるのだが、目の前の優しそうなこの人は策太の万年仏頂面をどう感じるのだろうか? 「どう、守れそう?」 「……はい」 微妙に返事が煮えきらない感じになってしまった。こんな簡単なことを自信を持って約束できないなんて。 「じゃあ指切りしよう」
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