家族

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 ラナは、やっと泣き止んだ男の子をベッドに寝かせた。 「ベッドがひとつしかないの。一緒に寝てもいいかしら」 「う、うん」  男の子は、顔を真っ赤にしている。 「どうしたの? 恥ずかしい?」 「う、うえ、あ」 「ごめんね。毛布もひとつしかなくて」 「……ごめんなさい」 「さっきから、どうして謝るの?」 「だって……」 「あなたは悪くないでしょ。なら謝らないの」 「うん……」  二人は、横になって、毛布をかぶった。  しんとした家の中に、かすかに虫の声が聞こえる。  ぽつりとラナが言う。 「ぼうやの名前は、本当にウィレムなの?」  子供は、すぐには答えなかった。 「……ちがう。本当は……レムって言うんだ」 「そうなの。おうちはどこなの?」 「ないんだ」 「ご両親は?」 「いない」  ラナは、衝撃を受けた様に黙り込んだ。  やがて。 「もしレムが良かったら、一緒に暮らさない?」  そう言った。  レムは毛布の中で、こくりと頷くと、もう放すまいとするかのようにラナにしがみついた。 「ありがとう」  ラナは、愛しくなってレムを抱き締めた。レムの身体は、とても温かかった。  二人は、共に助け合って暮らした。  
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