0人が本棚に入れています
本棚に追加
それからというもの、雨が降るたびに、母はおかしな行動をとるようになった。
突然、声を上げて、泣き出すこと、145回。
髪をかきむしり、奇声を上げること、104回。
おやつを片手に、家を飛び出すこと、45回。
過呼吸になって、倒れること、7回。
父は、妹の遺骨を持ち去り、家から逃げ出した。
それでも、母の症状は、収まらなかった。
だから、私が、ちはるの代わりとして、女のふりをしなければ、母の奇行を止めることができなかった。
そんな時に出会ったのだ。
画面の中で駆け回る、ロックスターのアーロンに。
声を聴いているだけで、私は、大嫌いな雨の音から解放された。
そうか、こんなに簡単なことだったんだ。
ロックスターに恋する乙女というシンプルな構図。
私は、無駄なことを考えずに済んだ。
セッションするために、ギターを練習して、会いに行くために、お金を貯める。
そんな行為を反復する毎日。
そんな毎日が私の命を繋いだ。
今夜眠っても、朝、目覚めたときに起きる理由は、すぐに見つかった。
アーロンと出会った日、私は完全に生まれ変わったのだ。
だから、私は、………
最初のコメントを投稿しよう!