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やはり、人の多いところは刺激も多い。込み合う電車、ビルが建ち並ぶ通りの風景、キャンパスでの学生たちの会話。日常の暮らしの中だけでも、新しい経験だらけだ。これこそ僕が求めていたものだ。自炊には時間がかかるし、掃除や洗濯も面倒だが、そんなことも新しい発見に思える。生き返ったような気持ちで、充実した日々を送った。
だが、新しい生活の中で、僕が一つだけ自分に課していた義務がある。月に一度、両親に連絡をとるということだ。伝えたいことがあるわけではない。尋ねたいことがあるわけでもない。用事がなくても、とにかく連絡をとる。仕送りしてもらっている者としての最低限の義務だと考えていた。
両親からの言葉も、多くはなかった。
「おお、元気か。」「うん。」
「勉強してるか。」「うん。」
毎月、そんな単純なやり取りを繰り返した。「元気か」が「風邪引いてないか」になることもあったし、「勉強してるか」が「荷物届いたか」になることもあったが、基本的には実質的な中身のないやり取りだった。子供を遠くにやっているわけだから、心配なこともたくさんあったに違いないが、こちらには見せないようにしていたのだろう。
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