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何とも言い難いほどの新鮮さはあるものの、味はほぼ感じなかった。ほとんど未来がこういうものだとすれば、まだ自分には選ぶべき道が残っているのではないか。そんな希望が一瞬だけ心に灯った。しかし、すぐにそれは消えてしまった。
「この味は一体……」
そう呟きながら、ユージィはフォークを置いた。彼には未来を手にする資格はない、そう感じたのだ。
その時、料理長が穏やかな微笑みを浮かべ、静かにこう言った。
「ただいまお作り致しております」
「……え?」
その言葉にユージィは戸惑った。
「お客様のための未来です。ただいまお作り致しますので、どうぞお待ちください。」
ユージィは、まるで今までの自分の歩みがすべて覆されたかのように感じた。自分が選んでこなかった道が、まだ目の前に広がっていると言われたような気がしたのだ。
「未来はまだ作られていない?」
料理長は静かに頷いた。
「はい、今まさにお作り致します。ご自身で選び、作り上げるものです。選択を恐れないでください。選んだ道があなたを形作るのですから」
言葉が心に深く突き刺さった。自分はずっと、選択することから逃げてきた。流されるままに生き、自分の意思で何かを決断することを恐れていた。しかし、目の前にはまだ選べる未来が残されている。それは今まさに、彼の手で作り上げられるものだった。
ユージィはそっと息を吸い込み、目の前のデザートをもう一度見つめた。それは、まるで新たな可能性を提示しているかのようだった。自分で作り上げる未来の味は、どんなものになるのか。怖くもあり楽しみでもある。ウェイターは、ユージィの表情を静かに見守っていた。彼の銀色の瞳には、どこか暖かな光が宿っていた。
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