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外の雨は勢いを増し、止む気配がある様には見えなかった。
すっかり冷えたコーヒーの残りを一気に俺は飲み干す。
「本当に止むのかな」
俺はあまりの雨足に思わず呟く。
「止まなくても良いかな」
外をぼーっと眺めていた佐々木が無感情にそう呟いたその雰囲気は、次に俺が掛ける言葉を無くさせた。
沈黙が流れる。
「雨好きですか?」
今日受けた講義の復習をしていた白井さんが、沈黙に割って入って来た。
「前は嫌いだったんですけどね」
「閉じ込められますからね。こんなふうに」
「そうですね、みんな側に居るけど私は友達いなかったですから。逆に寂しさ倍増みたいな」
佐々木は努めて明るく振る舞う。
「そうですか」
流石の白井さんもそれ以上の言葉が無いようだった。
気まずい空気が流れる。
「ほら私って自由みたいだし、男に媚びてるらしいから、面倒臭いみたいな……」
無理にテンション高めに、自虐ネタでおどけたつもりの佐々木だが、雰囲気は変わらなかった。
「でも今は、雨大好きですですよ。みんないるし」
佐々木は白井さんと俺を見た。
「よかった」
白井さんは笑顔で応る。
「でも逆に晴れの日にテンション下がり気味になる様になっちゃって」
「佐々木さんのイメージだと晴れ女っぽいから似合うのに」
「嫌いじゃ無いですけど、晴れの日って、みんな自由に自分の道、歩むじゃ無いですか。それが今度は行って欲しく無いみたいな」
「道を歩むって、大袈裟過ぎだよ。そんなキャラじゃ無いだろ。パッと忘れて次、次」
全く会話に入って行けなかった俺は、ここぞとばかり場の雰囲気を明るくしようと、強引に明るく振舞った。
「いっちゃんには解らないよ」
予想外の佐々木の反応に驚くのと同時に、自分を否定する言葉と、明るく振舞った自分が馬鹿みたいに思えた事にイラつきを覚えた。
「人の事何て解るか」
「いっちゃんは自分の事しか見えてないからね」
最早ここ迄来ると売り言葉に買い言葉、ほとんど考え無しに言葉が口をついて出てくる。
「最近は視界に誰かさんが、ずっと居るから煩わしくて仕方ないけどな」
佐々木の表情が一変したのを見て、言葉が過ぎた事に気づき我に返った。
佐々木が何か言葉を吐き出そうとした瞬間、白井さんが割って入った。
「ちょっと待って!大火災のなってる。お互い売り言葉に買い言葉、本気じゃないから、ね。取りあえず一息つこうよ」
「コーヒーお代わりしてきます」
俺は直ぐにコーヒーカップ片手に席をたった。
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