挽回コンペ

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「プレゼン相手は、ITに疎いおっさん連中だから。専門用語はなるべく避けて、とにかくわかりやすくまとめること。 コピーやファイリング、キャビネットのないオフィスが想像出来ない人達だ。 クラウドやストレージについてどれだけ短時間で理解させるか、スライドのグラフや画像も工夫しないといけないね。 時間に限りがあるから、ごちゃごちゃさせずにとにかくシンプルに」 「なるほど。簡単に、って逆に難しいですね」 方向性は決まったものの、だからといってトントン拍子に進むわけではなく。 途中作業が難航し、やっぱりダメだぁ!と嘆いたり。 「一週間で準備して参加するなんて無謀だ。 調子に乗り過ぎじゃないか?当日恥を晒せばいい」なんて声も外部からチラホラ聞こえてきてメンタルやられたり。 だけど、一番堪えるのは。 ◇ コンペまであと2日。 今日も今日とて残業で、家に帰ってきてすぐベッドに倒れ込む。 着替えもシャワーも、ちょっと待って。 「彩葉さん…」 オフモードになると、どうしても寂しさが顔を出す。 彩葉さんとは一日中一緒に過ごしてる。 ランチも一緒だし、帰りだって、わたしに付き合ってこれまで断っていた残業までしてくれて、駅まで一緒に帰ってる。 だけどそれは上司の彩葉さんであって、恋人としての彩葉さんではない。
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