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コンペが終わるまでは、恋人モードはオフにしよう。
それは暗黙の了解で、ミーティングルームでずっと2人きりでも甘い雰囲気が漂うことはないし、視線を合わせて話をしている時も、わたしを見つめるそれは部下に対してのものだ。
こうやって家に帰ってきても、電話やLINEが来るわけではない。
コンペが終わったらめちゃくちゃ甘えさせてもらうつもりではいるけれど、そろそろ限界的に寂しいかも。
じわり、涙が滲んだところで電話の着信音が鳴る。
まさか彩葉さん?と期待する気持ちすら持てないほど、わたしの心は疲れているし諦め切っている。
画面を見ると、雨音さん。ほらね。
ということは、海音ちゃんかな。
海音ちゃんは、こうして時々電話をかけてきてくれる。
「しのぶちゃん?おしごとおつかれさまです」
その第一声で、はぁぁ癒される。
「ありがとう海音ちゃん」
「うん?どういたしまして??」
可愛いよ〜心が洗われるよ〜〜
「あのね、あやはくんまいにちつかれてる」
海音ちゃんの言葉に、眉を顰めた。
「ごめんね、わたしのせい。彩葉さん、わたしのお仕事手伝ってくれてるの」
「まいにちしのぶにあえてうれしいっていってるよ」
「えっ…」
本当に?だってわたしにはそんなこと一言も。
「でもいちゃいちゃできないからつらいんだって。はやくおわらせていちゃつきてえー!ってさけんでたよ」
じわじわと、胸がむず痒くなる。
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