憧れの上司

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◇ 社内の精鋭が集まる新プロジェクトに入社2年目の自分が選抜された時は、「なんの冗談?」状態だった。 嬉しいとか誉れとか、そんなの微塵もない。 ただただ血の気が引き、顔が青ざめていくのが鏡を見なくてもわかるくらい。 唯一の救いといえば、メンバーが各拠点に散らばっているため、皆さんと顔を合わせる機会はほぼないということ。 通常はteamsでオンラインミーティングやチャット、資料のやり取りが行われるらしい。 でも、だけど、それにしたって!! 「新人世代に経験を積ませる為、とかいう上層部の意向らしいよ。 成果は期待されてないからとにかくミスだけしないようにガンバレ。 うん、半年なんてあっという間よ」 いつもはわたしに対して辛辣な紗菜も、この時ばかりは慰めの言葉をかけてくれた。 「紗菜、愛してる…!」 「女子校気質やめろ」 「学歴に女子校はありません。女子校行きたかったあ」 「せっかくエリートが集まるんだから、彼氏候補見つければ? いい人いたら、あたしにも誰か紹介してくれ」 いい人、ねえ。 プロジェクトメンバーの名前一覧をざっと見やる。 総勢8名、 エリートは名前までエリートなんだな、と思わせる氏名がずらりと並ぶ。 「―――月森彩葉、さん」 ひとり、自分以外の女性の名前を見つけた。 もうそれだけで、親近感。
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