憧れの上司

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わたしの呟きに「ああ月森さん、」と紗菜が反応する。 「うちらの2期上の先輩でね、このプロジェクトでは忍の次に若いんじゃないかな。 相当優秀らしいよ」 「そうなんだ!わぁ憧れちゃう」 「単純ね。 でも、既にお子さんがいるみたい。 なんでもシングルだそうで… お子さんを理由に、最初はプロジェクト入りを断っていたそうだから。 残業、休日出勤なしを条件に承諾したそうだよ。 そうまでして欲しいと思われるのはすごいよね」 恐るべし、総務部の紗菜の情報網。 且つ、滅多に人を褒めない紗菜の言葉が太鼓判となり、わたしの中の彩葉さんへのリスペクトは益々募った。 しごできで、シングルマザーでお子さんとの時間も大切にされてて。 そんなスーパーウーマンと一緒にお仕事出来るなんて! ―――そして、プロジェクト開始早々から「彩葉さん、彩葉さん!!」と忠犬ばりに懐きまくり、今に至る。 彩葉さんは、噂以上に本っ当によく仕事が出来て、その上女性ならではの気遣いも半端なくて、リスペクトしかない女性だった。 基本塩対応で、『彩葉さーん!褒めて!ヨシヨシしてください!!』と甘えれば『ヨシヨシ』と棒読みの文字で褒めてくれる。 彩葉さんの『ヨシヨシ』が欲しくて日々全力で付き纏っているから、時々『うるさい』『キモい』と返されることもしばしば(そこも推し)。 だけど本気で落ち込んだ時には、『たいしたミスじゃないよ、気にすんな』と男前にフォローしてくれたり、『自分の2年前はもっと未熟だった。忍はよく頑張ってる。もっと自信持っていいよ』と励ましてくれる。 オンライン会議で、ハイレベル過ぎて全くわからなかった内容があると後で丁寧に教えてくれるし、何を聞いてもなんでも知っているから『歩くWikiですか?』と聞けば『座ってるけど』と間抜けな返事がかえってくる(そこも推し)。 そしてその都度わたしは彩葉さんへの愛を、声を大にして告げまくってきた(フォントを拡大して語尾は!マークを連打します)。
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