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不⑦
「これは……!?」
「事件発生日の久川さんのお姿です。何か違和感を覚えませんか?」
「後ろに……? 洋壱の後をつけている女……ですか? にしては、体格が大きいような……?」
「そうなんですよ、進藤さん。女性にしては体格が良過ぎるんです。でもね? 事件以前の防犯カメラ映像を見てもらえますか?」
そこには、華奢で小柄な女性が映っていた。だが、不思議な事に服装や髪型等が二人に共通している。その共通点に違和感しかない。
(どういう、事だ?)
「進藤さん、この事件。思った以上に深いかもしれません」
「そう……ですね……」
それ以上、識は言葉を返せなかった。目撃証言と同じ服装の人物が二人いた。その事実は思考を混乱させるのに充分だった。何故同じ格好を? 洋壱をストーカーしていた人物とどう繋がるのか? そもそも、洋壱は何故ストーカーされるに至ったのか? そして、殺されたのか?
謎が多すぎて、識は頭痛がする感覚を覚えた。
(ちきしょう……ようやく進展したと思ったのに!)
「朝倉刑事」
「なんでしょう?」
「改めて……この事件、俺にも調査させて下さい」
「勿論です。その為の相棒ですよ?」
「ありがとう、ございます……」
「とりあえず、場所を移動しましょうか? あの男の身元が知れるといいのですがねぇ」
「そうですね。では、署の方にですか?」
「えぇ、そうなります」
話を終えた二人は、ひとまず応援で来たパトカーに同乗させてもらい近くの警察署へ移動する事にした。初めて乗るパトカーに緊張する識に対して、応援の警察官が声をかけて来た。まだ若そうな見た目の男性警察官だ。彼は、訝しげに識へ視線をミラー越しに向ける。
「貴方が噂の探偵さんですか? 思った以上にお若いんですね」
「そうですか」
(あまり良い噂とは思えねぇな)
「おやおや? どういう噂なのかお聞きしたいですねぇ。私と関係ありそうですし、ね?」
朝倉が穏やかながらどこか圧を感じさせる口調で男性警察官に話を振ると、彼は咳払いをしてパトカーを署へ向けて走らせ始めた。
(この朝倉刑事、どんな評判なんだ?)
識としては、そこも知りたい所でもあるが……興味よりも今は事件解決が最優先だ。そう思いながら窓の景色を見つめるのだった。
****
近く……と言っても、練馬警察署に辿り着いた識と朝倉は、パトカーから降りて中へと入る。朝倉と共にいるからか、それとも先程の噂とやらのおかげなのかすんなりと入る事が出来た。
「さて、あの男の事情聴取を担当しているのは……あぁやはりあの方ですか」
「ご存じの方ですか?」
「進藤さんもお会いした、あのいかついオジサマですよぉ」
過去に何かあったのか? 含んだ言い方が気になったものの追求する気になれず、識は朝倉の後に続く。通されたのは、またしても会議室だった――。
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