発熱

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「おい、大丈夫か?」 その声にハッとして顔を上げれぱ、湊が膝を折ってこちらを覗き込んでいた。 凪さんとは違う茶色い瞳が心配そうに揺れている。 目の前には青い車。 ー・・いつの間に・・。 「悪かった。・・お前に教えなくてもいい事だったかもな」 バツの悪そうな湊の顔は初めて見た。 「ううん。いつか知ることでしょ?それに私が聞いたこともある。おかげでモヤモヤしてたものが少しなくなった。ありがとう」 「お前なぁ」と眉を八の字に下げたあと、ギュッと抱きしめられた。 少し高い体温が私を包む。 香水が、強く香る。
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