人生の攻略本

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 続きが気になる本のページに水が染み込んでゆくような声は、さらに続けた。 「……初めから答えを知っている問題を解いてゆくようなものですよ。例えば、学校の教師がいて、あなたの目の前へひらりと紙を置いたとします。その紙に書かれている設問の解答を、あなたはすでに知っている。……いいえ、今日その設問が出されること自体、あなたはわかっていた。これなら……問題が解けないとか、試験に不合格になる方がおかしい。……違うでしょうか?」 「あなたの思ったままに……使用してください。もちろん、無理強いはしません。あなたへきっかけを与えました。……何も見返りは求めていません。同類となったあなたから何かを求めたりなど、しない。……正直でしょう? ふふふふふ……」 「……一つ忘れるところでした。少しの間、試しに使ってみて、そして気に入ったら、表紙へあなたのお名前を書き込んでください。専用にするといいじゃないですか。……大事なものは独り占めしたいでしょう? ……いいんですよ、それを誰が責められるのですか? 誰でも自分が可愛いんですよ。ラクしてトクしたいんですよ。……違いますか? ……よく知っていることじゃないですか」 「……手にした者が放出するエネルギーを吸うのが楽しみで〜す。……あなたに会えて、嬉しいです。それでは……よろしくお願いしま〜す……」  一方的に語った声は「……川をみてください……」と最後に述べたため、水面を見つめた。
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