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「はい瑠花ちゃん、お待たせ」
新しいカクテルを、翔哉の方を一切見ず私の前にスッと差し出す。
あからさまに翔哉に喧嘩を売っているような態度に、私はハラハラした。
「いただき、ます」
口につけ、ひと口ごくっと飲んでみる。
緊張で、いつもより大きく喉を鳴らしてしまった気がする。
すぐさま翔哉にグラスを横から奪われた。
翔哉もまたごくっとひと口飲み、「うわ、やっぱりか」と吐き捨てるようにぼやく。
ええ、、もちろんノンアルです。
「ガキの喧嘩じゃねえんだぞ。なんだその態度、いい歳しやがって」
翔哉の言葉に、そっぽを向きツーンとしている黒崎さん。
「はー、今時中学生でも、んなガキっぽいことしねえぞ。可愛い顔してやってることは可愛くねえな?」
ぴく、と黒崎さんのこめかみがヒクつき、眉間に皺が寄った。
「可愛い」はやはり禁句らしい。
その様子にほくそ笑んだ翔哉は、更に続けた。
「わかったよ、藤崎の言う通りここはお前の店だ。お前の好きにするといい。
けどな、瑠花の婚約者として言わせてもらう。
───瑠花はもう諦めろ。こいつはとっくに、俺の女だ」
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