溺愛の始まり

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「着きましたよ」 黒田さんの声で、我に返る。 結局、私も眠ってしまったらしい。 気が付くと車は、ファミレスの駐車場に停まっていた。 ファミリーカーばかりが並ぶ中、場違いな感じのこの車。 やっぱり、無理があるかな? 「翔哉?」 尚も眠り続けるボスに声を掛けるも、目覚める様子はなく。 「起きてよ、翔哉」 ゆさゆさと揺すってみるが、それでも起きない。 え、何なのこの人。 ほんとに、ボス? そもそも、なんのボスかもわかってないけど。 失礼を承知で、頬をぴちぴちと叩く。 鼻をむぎゅっと掴む。 耳にフッと息を吹き掛ける。 そのどれをやってみても、一向に目覚める気配がしない。 「あの…この人いつもこんなんですか」 思わず、黒田さんにぼやく。 「滅多にないんですけどね。 モード入っちゃったかも知れません」 モードって、なに。 「そんな風に、電池が切れたみたいに眠ってしまう時があって。 そうなると、朝まで絶対起きません」 「え…じゃあ、どうするんですか」 「ボスは体も大きいですし、降ろして運ぶのも大変なので。 こうなった時は、そのまま放置して寝かせておけと指示されてます。 事務所の駐車場に車を停めて、そこで一夜を過ごすんです。 我々も、隣に別の車を停めて護衛しますがね」 うわぁ、、面倒なひと。
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