続編

57/64
前へ
/204ページ
次へ
絵葉書やお酒のラベルのようなものが貼られている中、端にピンで挿しぶら下がっていたのは、黒猫のチャームだった。 見覚えのあるそれは、私がバレンタインに渡したチョコレートのラッピングについていたものだ。 ホワイトデー付近に雪那さんと来た時は、お返しにとカクテル(もちろん私はノンアル)を一杯ご馳走になった。 その時には気付かなかったな。 黒崎さんに視線を移すと、ばちっと目が合う。 私がチャームに気付いたのを気付いたようで、少し口角を上げながら「はい、どーーぞ」と2つカクテルを差し出した。 翔哉のは、ライムを浮かべたジントニック、私のは、ニットワンピに合わせてか、バイオレットベースのカクテルだった。 「いただきます」 翔哉と軽くグラスを合わせ、口に付ける。 うん、美味しーい葡萄味のノンアルカクテルです。 翔哉が、くいっと自分のジントニックを半分程飲んだところで、私のカクテルグラスに手を伸ばした。 「瑠花、それ味見させて」 え。 一瞬固まった私の返事を待たず、翔哉は私の手からグラスを取り去り、そのカクテルを口に含んだ。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2610人が本棚に入れています
本棚に追加