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「なんだよコレ。アルコール入ってねぇじゃん」
うん、、やっぱり気付くよね。
「アレ、そうでした?」
グラスを洗いながら、しれっと惚ける黒崎さん。
翔哉はそんな黒崎さんを一瞥し、残りのノンアルカクテルをぐいっと飲み干した。
「んじゃ、もう一杯作って。今度はアルコール入りで」
そして空になったグラスを差し出す。
「……瑠花ちゃん、今日は色々あって疲れてるんじゃないですか。アルコールはやめといた方がいいかも」
「問題ないよ。いいから、作り直せ」
言い方は穏やかだけど、黒崎さんを見る翔哉の視線は射抜くように鋭くなった。
「──イヤです」
「はぁ?」
黒崎さんの返答に、目を丸くし、声をあげる翔哉。
虚を衝かれた私の目も、ぱちぱちする。
「この店で、瑠花ちゃんにアルコール飲ます気ないんで。……今のとこ」
そう言って、翔哉の視線に不敵な笑みを返した。
「ボスの言うことが聞けねえってわけだな」
穏やかなまま、凄味を増し圧を掛ける翔哉の雰囲気に、隣にいる私が圧されてしまう。
「この店のマスターは俺なんで。
ここでは、俺のやりたいようにやらせてもらいます」
けれど黒崎さんはそれに圧されることなく翔哉を見つめ返した後新しいカクテル、恐らくまたノンアルカクテルを作り直し始めた。
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