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「今日は申し訳ありません、
瑠花様の家まで送らせてください。
その後そのままボスを事務所に連れて帰りますので」
体だけは大きい、手のかかる子供だね。
もっと落ち着いた、大人の男性かと思っていたのに。
つい、口角が緩んだ。
「瑠花様の御宅は、どちらでしょう?」
黒田さんの言葉に、ハッとした。
バイト先の猫カフェはバレたけれど、家まではまだ把握されていない?
「え、と、あの」
バレるのは時間の問題だろう。
けれど、自ら居場所を明かすのは抵抗がある。
「…私、翔哉と一緒にいます」
「瑠花様?」
「しがみつかれちゃってるし、今夜は一緒にこの車で眠ります。
このまま、事務所に向かってください」
「瑠花様…!」
なんか勘違いして感動されてるみたいだけど、自宅がバレたくないという本来の目的を隠せたなら、それはそれでいい。
事務所の駐車場に着くと、黒田さんはそっとシートを倒してくれた。
そして2人分の毛布とペットボトルのお茶、おにぎりを渡してくれる。
「野宿させるみたいで申し訳ないです。
隣の車にいますので、何かあればお知らせください」
そう言って静かにバタン、とドアを閉めた。
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