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「翔哉……」
黒崎さんの気持ちに、気付いていた?
いつ、から?
動揺する私とは反対に、黒崎さんはフンと鼻で笑って尚も子供じみた喧嘩を続ける。
「とっくに諦めてますけど?
別に、奪ってどうこうしようなんて思ってねえし」
「だったら、元美容師だかなんだか知らねえけど人の女の髪触ってんな。
うなじ隠すのも、お前の役目じゃねえんだよ」
「だからヤキモチ焼いてシテる最中に電話出たんすか。手首にそんな引っ掻き傷までつけさせて。わーー必死」
「黙れ、この野郎!
気付かねえフリしてやってたのに調子にのりやがって。
アルコール出せねえんじゃ、瑠花はこの店出禁にするから構わねえよ。
女々しいことしてんじゃねえぞ、いい歳したガキが」
「……うっせえし、うぜえ」
「は?てめえ、ふざけんな開き直りやがって!」
席を立って中腰になった翔哉に、さすがに慌てる。
「や、もう、やめて?」
ホントに子供みたいな取っ組み合いの喧嘩になりそうで、必死に止めに入った。
「黒崎さんも、ほんと大人げないですよ。
もう、いいじゃないですか。
ホラ、可愛くなくていいから、アルコールのカクテルさっさと作ってください。それ飲んで、帰りますんで」
私の言葉に、黒崎さんは頬を膨らまし思い切り口をへの字に曲げ、ぷいっと横を向いた。
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