溺愛の始まり

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「ボスはさ、立場上、他の組からの縁談話なんかが後を絶たないわけ。 それを全部断れって指示が出てんだけど、断るにも理由が必要なの。 正式な女がいる、ってはっきり言いきんないと、断っても断っても、キリがねんだよ。 んで、そこんとこの仕事は俺の担当なわけ。 頭の良い瑠花ちゃんなら俺の言いたいこと、わかるよな?」 「…無駄な仕事増やすな、っていうのはわかります。 でも、正式な女になるかどうか以前に、私ボスのこと何にも知らないんですけど」  そうだよ。 年齢だって、何の仕事してるのかも。 「他の組」って、やっぱりそっち系なの? 「どうせ飽きてポイされるまでだから、って。ボスのこと知ろうとしなかったの、瑠花ちゃんだろ」 言われて気付く。ああ、そうかも。 「じゃあさ、今度の土曜日、2人で一日デートに行っておいで。 ボスの仕事のスケジュール調整して、そこ空けとくから。 ボスのこと知ってもらって、これからのことちょっと前向きに考えてくんない?」 え、デート? 「ボスのこともっと知りたいって言ったの、瑠花ちゃんだから」 知りたい? 知らない、って言っただけなのに。 「ボス、喜ぶだろーなぁ。 普段欲のない瑠花ちゃんからの、一日デートのおねだり」 場所は2人で相談しなね、と、行かないでと足に絡みつく猫達を優しくニコニコと引き剥がして黒崎さんは帰って行った。 ああ、黒崎さんの常套手段だ。 会話してるうちに、何故か彼の思惑通りに事が決まる。
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