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いつも後部座席で隣り合って座っているのに、それが運転席と助手席だと何故かくすぐったい気分だ。
辿々しく会釈し合い、翔哉が「じゃあ」と車を発進させる。
車内は珈琲の香りがした。
見ると、ドリンクホルダーに2つ、コーヒーショップのバガスカップが置かれている。
迎えに来る前に寄って、2人分の珈琲を買って来てくれたらしい。
「これから行くところ、ちょっと距離があるから」
私にはカフェラテ、自分にはブラックコーヒーを。
気が利くなぁ。
「いただきます」と早速啜る。
ふんわりと温かい甘さにほっとして、少し緊張がほぐれた気がした。
「俺のは、新発売のクリスマスブレンドだって。まだ10月なのにな。結構美味い」
「へぇ、飲んでみたい」
「いいよ、飲んで」
翔哉のカップを受け取り、こく、とひと口。
酸味が少なくて甘いコクがある。
うん、これなら私でもブラックで飲めるな。
「どう?」
翔哉の問いに「うん、おいし」と言い掛けて、はたと気付く。
これって…間接キス!?
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