3087人が本棚に入れています
本棚に追加
「ははっ、すみません」
懐っこく笑う、敬斗くん。
「いやぁ、藤崎さんが言ってたアビシニアンて、本物の猫じゃなかったんですねー」
「アビシニアン?」
アビシニアンは、猫の種類だ。
大きな耳と品のある小さい顔、ぱっちりとしたお目目。
ボディはスリムで筋肉質、足先は小さく、優雅な歩き方から「バレエキャット」の異名を持つ。
私達を席に誘導しながら、「いやね、」と敬斗くんが続ける。
「この間藤崎さん来た時、『最近ボスがアビシニアンに夢中でさー、溺愛ぶり半端なくて』なんて言ってたんですよ。
てっきりボスが柄にもなく猫飼い始めたのかと思ってました」
何、それ。まさか…
「一目見て、貴女のことだってわかりましたよ」
にこ、と私に笑い掛ける敬斗くん。
「俺、一応ここのオーナーで、日野敬斗と言います。
瑠花さん、よろしくお願いします」
「え、私の名前…」
まだ名乗ってないよね?
「ふふ。藤崎さん、『ボスが、ルカ、ルカうっせんだよ』とも言ってたので。
猫の名前と思ってましたけど、やっぱりそうだったんですね」
「なんだ、そのアビシニアンていうのは、そんなに可愛い猫なのか?」
恥ずかしさに追い討ちを掛ける翔哉。
スマホで早速検索している。
最初のコメントを投稿しよう!