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殺人犯の友人3
あの仕草と目つき、それに偽物くさい名前。怪しみだしたらきりがないが、本当に友達で心配しての行動なんだろうか。
もしそうなら、こんなことを考えているのは不謹慎きまわりないのだが。
「その田中さんですか? その人が犯人なのは間違いないですから、本名を教えたくなかったんでしょうか?」
「そうか、それもあるかもねえ」
圭吾に答えた秀が「その人は田中さんを見つけてどうする気なんだろ」と樹に聞いてきた。
「圭吾が言うみたいに本名を教えたくないだけだとして、男の話を信じるとすると、心配して探してるってことらしい。連絡が取れないし、自殺サイトがどうとか言ってたから」
「自殺!?」
3人が目を見開いた。
「自殺しそうなの?」
「人を殺してしまったんだからそれもあるかもしれませんね」
顎に手をやった圭吾がうんうんと頭を揺らすとぱっと顔を上げた。
「でも、それならやっぱり本当にお友達ってことですか?」
「うーん、かもしれないけどなあ」
どうもはっきりしない。樹は眉根を寄せた。
「名前といい、話してた印象といい、変な感じなんだけど、田中って人を探してるのは確かなんだよな」
空が「何かさあ」とつぶやいた。
「田中って人の居場所を知りたくてここに来たのかもしれないけど。田中って人と、田中さんが持ってるはずの何かを探してるのかも」
何かを探している。というのはどうやら本当のことだったようだ。
樹と空が会った田中の友人を名乗る男は、田中がどこにいるかもわからないし、あの例のバッグ以外は何も置いて行かなかったという話を何度も聞くとすごすごと帰って行った。
「何度も聞いたはずだよ」
樹の側で空が「何を探してるんだろう」と小さくつぶやいている。
5人して古い民家を借りているのだが。仕事も終わり、帰り着いた5人は言葉も出ず、目を丸くしたまま突っ立っていた。
家の中はどの部屋も台風が通り抜けたようなありさまになっていたのだ。
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