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荒らされた家
「まさか、泥棒?」
誰ともなしに言った言葉で目が覚めたのかのように5人で家の中を捜索。
タンスから小さな茶箪笥、台所の床下にある古い収納庫まで荒らされ、天井裏に行けるであろう押入れの板までずれていた。
すぐさま警察に連絡。
店にやってきた怪しそうな男のことも一応話しておいた。
「あの男のこともこれでわかるかな」
「どうだろう、どうせ偽名だろうしな」
警察が帰った後、片付けに1日かかった。
喫茶店が休みだったからよかったものの、5人は夕飯を食べに出た馴染みのカフェバーでため息をもらした。
「ったく、休日が掃除で終わるなんて」
圭吾がメニューを隅々まで見つつ文句を言っている。
「仕方ないよ。まさか家まで荒らされるなんて思わなかったし」
「何にも盗られてなかったからよかったじゃない」
湯野川に答えるように秀があきらめ顔でメニューを樹に渡した。
「それにしても、一体何を探してるんだ」
家の荒らされように腹が立っていた樹が頬を膨らませると、空がちらりと上げた視線をメニューに戻す。
「空、何かわかってんだろ」
メニューを突き出すと、嫌そうにのけ反った空は「そりゃ、これでしょ」と開いたメニューの陰でOKの手を下に向ける。
「それって、金かよ」
樹は身体を乗り出すと声をひそめた。秀も湯野川も目だけで2人のやり取りを見ている。圭吾はさもありなんてな顔でメニューを隅から隅まで見ているようだ。
「じゃない? 警察の人の反応から見ても、うちにきたのはどうもそっちの筋の人みたいじゃないか」
「そんな人が探してるものと言えば想像はつきますねえ」
声をひそめる空に圭吾も肩をすくめる。
「それもかなりな額でしょうね」
そっとあたりを伺った秀が身体をかがめた。
「じゃああの田中さんが持ち逃げしてるの? 」
「うーん、そんなイメージじゃないんだけど 」
樹が唸ると圭吾がしかめっ面を向けてきた。
「殺人犯なのは間違いないんですよ 」
「そうだけど。やばい金を取ったのは死んだ奴なんじゃない?」
「そういう犯歴があったぐらいだしね」
目があった空はメニューを閉じた。
「田中さんがどんな関係かはわからないけど。そいつが持ってた金を奪ったのか、ともかく追われてるのは確かみたいだよね」
「田中さんの行方も金の行方もわからないんだろうな」
「うちを家捜しするくらいですからねぇ」
ため息をつく樹に圭吾も頬杖をついた。
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