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殺された男の顔2
大きなため息をついた樹は、刑事さんの話を繰り返した。
「バッグに切断された手足が入ってただろ」
4人とマスターの顔が嫌そうに歪む。
「あの手の指紋から犯罪歴のある奴がヒットしたんだ」
「誰かわかったんですね?」
「まあ、そうなんだ。そうなんだけど」
口を濁した樹は、
「殺された男、千田っていう男だったんだけどな、そいつの顔が、俺が占った男と同じ顔なんだよ」
「それって」
目を瞬いた秀が、
「バッグを置いて行った男のこと、だよね?」
「まさか、それ変ですよ」
圭吾が盛大に眉を上げる。
「バッグに入っていた手足の男と持って来た男が同じって、そんなわけないしょう?」
信じられないというように顔を見合す秀や圭吾。
信じられないのはこっちなんだって。
今でもあの男の顔は思い出されるというのに。殺されてバラバラにされた男とバラバラの手足を運んだ男が同じだなんて。
「ねえ、同じ顔って、まったく一緒だったの?」
カウンターの端に座っていた空が身体を斜めにする。
「同じ、にしか見えなかったんだけど」
まったく一緒かと言われたらどうなんだ。髪型は違ってたし、着てるものだって違ってた。それに。
樹が言い淀んでいると、
「そうか。同じ顔っていうか、よく似た顔なんだよ」
答えが見つかったように言いきった湯野川は「兄弟とか、双子とかじゃない?」と持論を持ち出した。
「えー? 双子って。そんなドラマありましたよね」
圭吾がすかさず突っ込んでいる。
「でもさあ、同じ顔ってことは、親類縁者とかありそうだよね。まったくの他人の空似もあるかもだけど」
秀もドラマかゲームの内容でも思い出したのか、身体を左右に揺らしている。
「そうなのかもな」
頭を横に振った樹は目の前に座っていた男と写真の男を照らし合わせるように頭の中で並べていた。
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