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会ったことがある?
「写真の千田って男は犯罪歴があるぐらいだからか、如何にもって感じで写ってたんだ。占った奴はそんな悪いことをするようには見えなかったけど。でもあんなものを運んでたんだから、そういう奴だったんだよな」
「印象が違うってこと?」
身体を斜めにしたままの空がストップをかけるように声を出す。
「何がどう違ってた?」
「そりゃあ、髪型とか、服装とか」
「どんなふうに?」
「どんなふうって。そうだなあ」
突っ込んで聞いてくる空とそれに答える樹の顔を、カウンターに並んだ3人が交互に見ている。
「写真に写ってる男は、派手なシャツを着崩した感じ? 今さっき捕まりましたよって感じなんだ。髪も染めて金色に近くて。でも、俺の占った奴は黒髪にチェックシャツだろ。普通の人っていうか、真面目でおとなしい感じかな。しゃべり方もおとなしい印象で」
そこまで言った樹は「しゃべり方?」と眉根を寄せた。
「しゃべり方がどうしたの?」
椅子にもたれていた空がすいっと身体を起こした。
「うん。あの男、どうもどこかが引っかかってたんだ」
樹はうつむいたまま顎に手をやった。
「どこかで会った気がするんだ」
「どこかで?」
「お客さんですか?」
秀や圭吾が即座に反応する。
「それは、わかんない」
「わかんないって。会った気がするんでしょ?」
しかめっ面の圭吾の後ろから空がまたソファに身体を沈めていく。
「樹はお客さまの顔を覚えるの得意だけど、顔は見覚えないんだろ」
そうだ。顔は知らない顔だった。
だけど、どこかで会った気がする。
「どこかで会ったのかな」
眉間にしわを寄せる樹に、秀や湯野川が、
「やっぱり誰かと似てるんじゃない?」
「話し方が似てる人っているでしょ」
と気遣うように眉を下げた。
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