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殺人犯の友人2
「で? 本当にその男はご友人なんですか?」
圭吾が思いっきりしかめっ面で聞いてきた。
その場にいたら、男にくってかかってたんじゃなかろうか。
「たぶん、違うんじゃない?」
樹も感じていた違和感を空も思っていたようだ。何でもないようにさらりと返している。
「違うの?」
バイトでいなかった秀と湯野川が声を揃えた。
「何だかねえ」
空があきれた様子で布巾を手にカウンターに入っていく。
「あ、これも」
秀が薄汚れた布巾を空に投げ渡した。
そんな様子を横目で見ていた圭吾が「違和感ですか?」と聞いてくる。
「それもある」
答えた樹は「それに」と続けた。
「探してる男の名前を聞いたんだけど、何とも偽名くさいというか」
「嘘だってこと?」
湯野川がわけがわからないというように目を瞬く。
「たぶんねえ。田中拓哉って人らしいけど」
「上は適当。下の名前は、芸能人の名前だよ」
空が洗った布巾でカウンターを拭いていく。
「何で、芸能人ってわかるの?」
絞って置いてあるもう一つの布巾を手にした秀はカウンターチェアを拭きだした。
「あの男が来た時にちょうどテレビでワイドショーをしてたんだ。その中で今夜のドラマの番宣してて、その芸能人がアップになってたからさ」
「あいつ、それを見て言ったのか」
樹も納得したようにうんうんとうなずいた。
「いったい、何なの、その人」
湯野川が掃除用のモップを手渡してきた。
「さあなあ。友達と顔が似た奴が殺されて、気になって調べたら、殺した奴も同じ顔だってわかって。で、ここにたどり着いたらしいんだけど。連絡が取れないって本人は言うんだけどさ。似たような顔ってだけで、ここに来たのが友人とは限らないだろ? そう言ったら、いや、そいつだって言いきるし」
「俺がコーヒー持って行って聞いたんだけど。あの動きは普通の動作じゃないかも」
空が口を挟む。
それに樹も大きくうなずいた。
「いきなり側に来られて驚いたとは言え、あの目つきもちょっとなあ」
「もしかして、やばい人なの?」
湯野川の問いに2人して「わかんないけどなあ」と言葉を濁した。
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