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19時過ぎに蟹ちゃんと別れた後、私は駆け足で家路に着いた。通り過ぎる人達に驚かれても気にする事無く、必死で走った。
なんたって今日は家族みんなで食卓を囲める貴重な日なんだし。
「ただいまー。」
ローファーを荒っぽく脱ぎ捨てると、ニヤニヤしながらリビングを覗く。
キッチンに立つお母さんは夕食を作ってくれていて、お兄ちゃんはまだ帰ってないみたい。
私の家庭はシングルなんだけど、物心付く前から父親という存在は居なくて記憶無い。
だけど悲観していないのは、私にはお母さんとお兄ちゃんっていう大切な存在がふたりもいる。
それがほんとうに幸せだから、寂しいなんて思ったことない。
そう思えるのはきっと、お母さんのお陰だ。
私達兄妹に対して、父母二人分の愛情を細い身体ひとつで与えてくれてるからだ。
お母さんは私たちを産む前に勤めてた夜のお仕事に復帰して、私達兄妹を育ててくれてるんだけど、お兄ちゃんが高校卒業後社会人として働き出して、家にまとまったお金を入れてくれる様になったから、昔よりは息抜きができてると思う。
現に、同伴が減った。
だから、他所よりは回数少ないにしても、家族みんなで夕食を一緒に食べれる今が人生で一番幸せなのかも。
そんな優しいお兄ちゃんは19歳で、私は高二の16歳だ。
私も高校を卒業したら、お兄ちゃんの様に稼いで、お母さんに恩返ししたいなと思ってる。
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