再会と悲劇

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「なにを勝手に無かったことにしようとしてるんだ?先方が前向きに検討してくださると仰っているのにっ、なぜ突然、」 「さぁ…なんでだろうな?知りたいならそこで突っ立ってる女神様にでも聞けよ。俺は信頼出来る相手としか契約は結ばない─…以上。」 「勝手に終わらせるなっ……!本っ当に、申し訳ございません!!後ほど改めて謝罪に伺います!本日はこれで失礼いたしますっ」 黙って部屋を出て行ってしまった旺司くん…いや、九条社長の後を追いかけて立ち去った付き添いの男性。 残された私と副社長の間には何とも気まずい空気が流れる。 「……え、もしかして知り合い?」 「…学生の頃、お付き合いしていた方です。」 「……とりあえず、お客様をこのまま帰らせるのは失礼だ。下まで送って差し上げて。」 「……承知しました。」 あくまでも仕事。私はここに仕事をしに来ているわけで…思い出や感情に流されて、仕事を放棄するなんて社会人失格だ。 旺司くんが私に向けた冷たい眼差しを思い出すと、足がすくみそうになるけれど…ここで踏み出さなければきっと一生、私は立ち止まったまま動くことが出来なくなるような気がした。
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