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「いえ……ちょうど派遣を切られたところで困っていたので。副社長に声をかけてもらえて嬉しかったです。こちらこそありがとうございます」
大手のメーカーという訳ではないが、他と無い独特のデザインで独自のブランドを大切にしているVanDoUの製品は人気で…
最近ではカフェやバーなど、飲食店舗の椅子やテーブルが人気で受注ストップをかけているほどだという。
「ありがとう…!早速で申し訳ないんだけど。今日の商談の打ち合わせに同席して欲しいんだ」
「畏まりました。先方の資料をいただけますか?目を通しておきます」
「あまり、参考にならないかもしれないけど」
参考にならないとはどういう事だろう?っと思いつつ、商談相手の企業だと思われるホームページをスマホの画面に表示して私に見せた副社長。
「経営者が変わったみたいで。何か…かなりの若社長みたいでさぁ?元はホテル業一択だったはずなんだけど、トップが変わってからは飲食業に力を入れているらしくて…」
新店舗をいくつか出すにあたって、テーブルやチェアの大口の発注をお願いしたい…と先方からの申し入れがあったみたいだった。
「まぁ…受注ストップかけてるからね。若社長が直々にここまで足を運んで交渉にくるみたいで…僕も緊張してるんだ。」
私よりも年齢が一回り上の副社長。長身であるが瞳が少しタレ目がちの童顔フェイスなので…それほど威圧感はなく、人見知りの私でもすぐに打ち解けることが出来た。
そんな彼が緊張している姿を見て─…
この後訪れる先方の社長がどんな人物であろうと、出来る限りのサポートをして副社長を支えようと思った。
そう、この時は本気でそう思っていたのに。
まさかこの後…最愛の彼と再び顔を合わせることになるとは。夢にも思わなかった─……
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