E p i s o d e .1

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「ありがとうございました〜。またお越しくださいませ〜」  雨の日だって夕食時はいつも忙しい。寧ろ繁華街の近くにある惣菜店だからか、0時を過ぎても客足は途切れることはなく、色んな人がお弁当や惣菜を買い求めに来る。  飲食店のボーイらしい人。カップルな香りがする男二人組。週に一度は必ず来るスーツ姿の男性。足元がふわふわした千鳥足の女性。早朝にきれいなお姉さんをつれたおじいちゃん。エトセトラ、エトセトラ。    お客さんはお客さんだって分かってる。でも最近、彼らは月にお給料を幾らくらいもらっているかとても気になる。  下世話だ。つまらない興味だ。悲しくなる現実だ。  先入観は駄目だって分かっているけれど、良い腕時計をしている人は良いお仕事をしてるよね?そうだよね?違うかな。  あのおじさんもぴかぴかの金色の腕時計をしている。  ダイヤモンドが埋め込まれた腕時計だ。  あの時計、幾らするのかな……?  5万、くらいかなあ……。  それとも、私とケンちゃんの給料足しても足りないほど高級品だったらさすがに悲しい。泣いちゃう。  おじさんは"足りない分"を"女で許す"と言った。  ということは、渡すお金が足りればいいってことで……でも、だからといってすぐさまお金が湧いて出てくるなんて魔法のような美味しいお話は無いわけで。  店長にお給料を前借りするって方法しか私には思いつかない。  しかし前借りしても、結局翌月の自分の首を絞めることに繋がるからおすすめ出来ない。
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