E p i s o d e .1

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  「あおさん、ありがとうございます……!」  そして、彼と入れ替わるように、いつの間にか消えていたスタッフが奥から姿を見せた。 「いいよいいよ、ていうか、いままでどこに居たの?」 「ちょっと奥に隠れ……僕、補充してきますね!」  彼は慌てた様子でバックヤードへ向かった。どうせさっきの常連さんが怖くて逃げていたのだろう。  ポテトサラダのひとは月に数回来店して、毎回お弁当ひとつとポテトサラダとシュークリームを購入している。  先入観は駄目だけど、ポテトサラダさんは多分怖い系のお仕事をしている……と思う。  彼を初めて見た時のことをよく覚えている。    あれは真夏。熱帯夜だった。  彼は白い半袖姿で、袖口から伸びるその両手には夥しい数のタトゥーで埋め尽くされていた。遅れて、その人の顔がものすごく整っていることに気付かされた。    両腕、首筋、見える場所全てに彫られたタトゥーはインパクトがあるのに、その表情はやる気というより生気のない、気怠げな雰囲気を纏う人。  まるで自分じゃなくて、タトゥーが主役なんだって言ってるみたいだった。    見た目が怖そうな人が来た場合、店長か私がレジを任されている。新人や若い子は怖い人相手だと手や声が震えるからだ。その気持ちも大体分かる。  けれど、ポテトサラダさんは違う。  そのタトゥーは怖いと思うよりも先に〝綺麗〟だと思って。あまり怖がることもせずに、対応できている。
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