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ポテトサラダさんは森のくまさんみたいな人だと思う。あの見た目だから偏見で損をしている。見た目が怖いだけであまり害はない。勿体ない。
それよりも、善人の皮をかぶった馴れ馴れしい人間の方が私は嫌いだ。
とあるお客さんが、アドレス教えて、と週に四日のペースで来られていた時は困った。出待ちされて、それでも断わり続けていたらお店のクレーマーになって、店長に相談して警察に対応してもらったのも記憶に新しい。彼は今接近禁止命令を出されている。
「(ていうことは……あのおじさんも警察に相談したら接近禁止になるかなあ?)」
そうだ。この手があるじゃん。ケンちゃんに相談しよう。ピカ!と頭の上で電球を灯しトレイを片付けていると、ジャラ……という嫌な音が聞こえて目を丸くした。
だって、トレイの上にはしっかりとお釣りが残されていたからだ。
「さ、さっきのポテトサラダの人だ……!」
今日の私は仕事に身が入っていない。それも自覚症状がある。お金のことを考えすぎて、お金のミスをするなんて……サービス業の端くれ物として有るまじき行為である。
「ごめん、お客さんの忘れ物。レジお願い!」
「え?あおさん、今外雨降って……」
「よろしくね!」
雨が降っているのは知っていたけれど、傘を取りに戻ることもせずに追いかけた。そんな暇があれば追いかけた方がよっぽど建設的だと思った。
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