E p i s o d e .1

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 ピンポーン。  時刻は23時過ぎ。夕食の時突然家のチャイムが鳴った。私がバイト先から廃棄用の惣菜を格安で持ち帰る時はちょっとしたパーティーだ。狭いテーブルを惣菜で埋めつくすように並べ、どれから食べる?と、それぞれ好きなものをまずはじめに選ぶ。そんな儀式のようなものはすっかり終わっていた。    とりわけ今日はとてもラッキーだった。    バイト先で人気の……人気だけど私は好んで食べようとせず、二年働いているのにまだ食べたことの無い、ポテトサラダを初めて実食しようとしていた矢先にこれだ。    ドンドンドン!と扉を叩く音が聞こえた。ビクッと肩が揺れ、お箸を持つ手は勝手に震えてしまう。その後、狭いテーブルを囲った先にいるケンちゃんを見た。  この家には時々鬼が来る。 「あー、忘れてた」  ケンちゃんは俯いていて私と目を合わせようとしなかった。   「……おじさん、今日来る日だったの?」 「うん。だから忘れてた。まじごめん。」  ケンちゃん、ごめんって言うならちょっとくらい申し訳なさそうにして欲しい。  そんなことを思ったところで今更どうにもならない。   「ううん、いいよ。いいんだけど、いいんだけどさ。……今日は、大丈夫なんだよね?」 「うん。……大丈夫」  ケンちゃんはそう言って後頭部を手で雑にかくと立ち上がった。
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