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EPISODE・2
「――――ん……」
気持ち悪い……。
臭いし苦しい。
口で扱く度にべっとりと汗が滲む皮下脂肪に額が当たって気持ち悪い。食べ物じゃなく人間の一部を口に入れるこの行為のどこが良いのだろう。生き物の生臭さがどうしても受け入れられないし、何より垢のようなものがボロボロと擦れ落ちているし、不味いし……臭い。
こういう時こそ、羊を思い出そう。
「ってえなあ、おい」
脳内で羊と目が合ったその時、ちぎれそうなくらい耳を引っ張られ、「いた……っ」と口を離して顔を歪めた。前髪を急に引っ張られ、強引に上を向いた。おじさんと目が合う。
「俺はな、姉ちゃん。もーっと痛かったよ」
「す、すみ……すみません……」
「謝る気あんなら、もちっと上手にしゃぶれや」
そうは言っても、やり方が全然わからない。下手くそという自覚はあっても、ケンちゃんは毎回文句を言わないし……、
「つまらんのお、姉ちゃんは顔だけやのお」
躊躇っていれば上から盛大なため息が聞こえ、首根っこを掴まれると喉の奥まで一気にソレを押し込まれてしまい、うえっと嘔吐く私を気遣う様子もなくおじさんは腰を振り始めた。
気持ち悪くて羊を数える暇もなく、早く終わって欲しいの一心で私は耐えた。
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