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「あの……ケンちゃん。そろそろ美容室行きたいから、美容室代欲しいな」
シャワーを浴び終えると、ケンちゃんはリビングでテレビを見てきた。またお笑い番組を見ているらしい。
そんなケンちゃんにお金を強請ると、ケンちゃんは不機嫌そうに睨め「は?」と、眉間に皺を寄せた。
だけど、前回の美容室だって、覚えているだけで一年前に行ったきりだ。伸びっぱなしの髪もそろそろ切り揃えたい。
「だから、美容室代。私もバイト代、生活費に入れてるでしょ?5000円くらい欲しいな」
「美容室とか行かなくていいじゃん。俺ロングヘアの方が好きだよ」
「そうは言うけど、前髪だって切りたいし」
「前髪は俺が切ればいいじゃん」
「でも、ケンちゃんは美容室行くじゃん。私だって行きたいよ」
「はあ……」
これ、ダメなやつだ……。
ケンちゃんの溜息に絶望を悟る。
私は給料日になると生活費として給料のほとんどをケンちゃんに渡している。家賃や光熱費の支払いをケンちゃんにお願いしているからだ。
手元に残るのは2万程度。それも一日の食費を500円に切り詰めても、生理用のナプキンだったり、日用品を揃えていたら最終的に手元に残るお金はほとんど無い。
「……なんでもない!ケンちゃん、ロングが好きなら丁度いいよね。じゃあ、シーツ変えるから、ちょっとまってて」
「おー」
そう言って寝室へ向かった。おじさんの体液が飛び散ったシーツを剥いで新しいシーツに取り替える。
美容室代じゃなくて、本当は、保険料に宛てたかったけれど……お小遣いで何とかするしかない。
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