EPISODE・2

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   お腹空いた……。  結果、貯金を切り崩して保険料を支払った。他に切り詰める部分が私には食費しかなくて、こういう時飲食業はなかなか辛いものがある。  味見係でいいから、私も食べたい……。  いい匂いと美味しそうな惣菜。ああ、誘惑が多すぎる。 「そういえばあの傘、まだありますね」  品出しをしていると、後輩の女の子がたった今思い出したかのように告げた。ポテトサラダさんが残していたあの傘だ。 「一応、来店があったら渡してって言ってるのにな」 「無理ですよ、私は無理です。あまり関わりたくないです。いとさん、良く喋れますよね!?凄いですよ!」 「喋るって……接客の範囲内しか喋らないよ?」 「それでも凄いです!超尊敬します!多分あの人、暴力団関係者とかヤクザとか密売人とか詐欺師とか、そんなのですよね!?」 「知らないけど……そうなのかな」 「あれで普通の会社員は無理がありますよー!」  確かに言えている。  ポテトサラダさんはもしかすると私がいない間に来店されたのかもしれないけれど、ポテトサラダさんを接客できるのが私か店長のみという激レアカードみたいなものだから、単純に、傘を渡せていないだけかもしれない。  
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