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ゆっくりと立ち上がった。微かな光が消えていくのが分かる。指先は当たり前に震えていたし、きー……ん、と、耳鳴りのようなものが聞こえる。
おじさんは布団の上であぐらをかいていた。もう下を脱いでいるようで、嫌でもその聳えたつ俗物が目に入り吐き気を催した。でも、私はいつもそうするようにその前に座った。
髪の毛を耳にかけて、まるで土下座をするみたいに頭を垂れ、美味しくもなく、ましてや進んで口にしたくもない、気持ちの悪いものを口に含む。
まるで魔法の呪文だ。
〝ケンちゃんのために〟
〝ケンちゃんのためなら〟
空っぽだった私に、世界を与えてくれたケンちゃんが困っているなら……。
この言葉だけで私はなんだって出来る。
おじさんの息が弾んでゆく。
羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹……
呼吸に合わせるように頭の中で羊を数える。
「はあっ、はあっ……。ああ、ええわ〜……」
羊が二十五匹、羊が二十六匹、羊が二十七匹……
私は平凡な家庭を望んでいた。普通の幸せが欲しかった。家に帰れば好きな人が出迎えてくれて、テーブルを囲い、温かいごはんを食べるだけで良かった。
私の望みは……、
「あー、もう我慢出来んわっ!」
突然押し倒されると、シャツを捲られ顕になった膨らみに顔を押し付けられた。
羊が七十七匹、羊が七十は、
「いっ……!!」
ガリッと胸の突起を噛まれ、瞬間。痛覚が思考を支配する。ショーツをずらし、無遠慮に侵入する硬いソレに身体を震わせた。
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