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覆い被さって腰を振る男が、動きをいっとう激しくした。五百八十匹の羊を脳内で囲うと、ようやく男は動きを止めて奥に奥にと潜り込むように私に身体を密着させた。分厚い脂肪が気持ち悪い。脂混じりの汗がぼたぼたと私の体に落ちて、気持ち悪い。
「はあっ、はあっ……」
ずっと荒いままの息遣いが耳にこびりついて気持ち悪い。
「(……さむい……)」
暑そうにしているのに、一向に私の身体が温まる気配もない。
おじさんは私の中からずるりと引きずり出した。その感覚が気持ち悪かった。ポタリと私の頬に液体が落ちた。背筋に悪寒が走った。
「なあ姉ちゃん、お前本当に店で働かんか?」
行為が終わり、ガチャガチャと耳障りな音に不快感を覚えていると、終わったはずの話を蒸し返された。
「――――え?」
「そっちがええよ。姉ちゃん、器量は良いしナカは最高やしのお。なあ、考えてみんか?」
「――あ、の……ケンちゃん、が……だめだって」
「そりゃあケンちゃんの話で、姉ちゃんの考えじゃねえだろうよ」
「……」
「彼氏に責任押し付けんのやめようや。な?」
責任……。
たしかに、ケンちゃん1人に責任を押し付けるのは駄目だ。
「ねえちゃんが働くと、ケンちゃんも楽になるで〜?」
ぐらり、目眩がした。
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