E p i s o d e .1

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 おじさんが言う〝店〟は、いわゆる風俗だ。   「わ……たしも……いやです……」  震える声で言葉を紡ぐと、「釣れんのお」と、おじさんは軽く服を着て腰を持ち上げた。  遅れてリビングに戻ると、ケンちゃんは玄関先でおじさんの靴を揃えて、へこへことお辞儀をしては、おじさんが帰るのを見送っていた。  ケンちゃんはずっと、ずっと笑顔だった。  それを横目に私は直ぐにバスルームへ行きシャワーを浴びた。膝を曲げないと入れないほど小さなユニットバスに、おじさんの体液と混ざった水が溜まっていく。それに足を付けるのもいやで、いやで、いやで。  節約しているのにボディソープで身体をゴシゴシと洗って、シャワーはその間流しっぱなしにしていた。    ――――なんで。 「おええ……っ」  気持ちが悪いのになにも吐けずに嘔吐いていると、吐くものが無いから胃液が出た。そういえば、夜ご飯何も食べてないや、と、今更気づいた。  シャワーを終わらせ、トレーナーとショーパンでバスルームから出ると、ケンちゃんはリビングでテレビを見ていた。声を聞く限りお笑い番組らしい。 「あお、髪濡れてるって」 「……うん……」 「おいで、乾かしてあげる」 「……うん……」  胡座をかくケンちゃんの前に体育座りになると、芸人さんのコントの途中だっていうのにケンちゃんはドライヤーの風を私の髪にあてた。テレビの中のコンビ芸人は最早動作だけで、口パクだ。面白いのか全くわからない。  
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