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テーブルの上を横目で見た。おじさんが来る前は手付かずの惣菜もほとんど食べ残しの状態で、私が食べようと思っていたポテトサラダも当たり前に空っぽだった。
「ポテトサラダ」
「ん?」
「ポテトサラダ、美味しかった?」
「あー……まあまあ?つか、わざわざポテトサラダとか買う必要なくない?買わなくても作れるじゃん」
料理をしないケンちゃんは簡単に言うけど、ポテトサラダって案外めんどくさいんだけどな……。
でもケンちゃんにとっては一流レストランのポテトサラダも惣菜屋のポテトサラダも私が作ったポテトサラダも全部おなじなのだろう。
「そうだね。確かに作れるよね。今度作ろうかなー」
「ポテトサラダより普通のサラダがすきだな俺」
「私が一人で食べるからいいもん」
「ごめんな、あお」
ケンちゃんは話を遮ると、背後から私を抱きしめた。おじさんの件は二人で乗り越えよう、と、ケンちゃんは言った。
私の世界はケンちゃん出来ている。そしてケンちゃんの世界にも私はいる。
「ううん、いいよ」
ケンちゃんと同棲を始めた時、一つだけ約束をした。
"この家に誰か来ても上げないこと"だ。
私はその約束をずっと守っていた。そもそもこの家に誰か来ることは無かった。もしくは、誰か来たとしても私がいる時じゃなくてケンちゃんがいる時に来ていたのかもしれない。
とにかく三年間は平凡に、穏やかに過ごせていた。
ケンちゃんとだったら私は普通の幸せを手に入れることができるのかもしれない……。
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