第一話 出会い

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第一話 出会い

「そうだ!誰にも邪魔されない、遠い場所へ行こう!」 バスや電車は苦手なため、タクシーを呼ぶことにした。 ここは九州、あまり東へ行き過ぎると、恐ろしい金額と時間になりそうだから、神奈川県の鎌倉市へ行こうと思った。 「すみません!こんにちは。」 「こんにちは!どこまで行きます?」 「結構遠いんですが、鎌倉市までって行けますか?」 「全然行けますよ!結構お値段しますが…」 「よろしくお願いします!」 「君、名前は?」 「九条青龍です。」 「知ってるよ!有名な水泳選手でしょ!」 「はい。でも今は大会にすら出られなくなってしまって…」 「もうすぐ高校生でしょう?そんな軽装備で、1人でなんで遠くに?」 「家を追い出されたんです。大会に出れなくなって、才能がないから、家にいるなと。」 「そんな服じゃ冬は無理だよ…」 「大丈夫です。寒さには強くて、水泳に出会う前も、小さかったから追い出されはしなかったものの、いないモノ扱いで、ときには家に入れてくれないこともありました。」 「そう…大変だったんですね」 「ちょっとまってて」 運転手さんは、コンビニに入っていった。 「お待たせ!」 「いえいえ」 「どうぞ!これ、私の好きな飲み物なんですよ。良かったらどうぞ!」 「ありがとうございます。」 ゴクゴク… 「とっても美味しいです!」 「良かった!」 いままで、お世辞だったり、有名という理由で優しくされたり、チヤホヤされるのが嫌いだった。そんな嘘偽りの、優しさしか貰ってこなかったからだ。なのに、今生まれて初めて、本物の優しさを貰った。心がポカポカする。本物の優しさを知った。
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