0人が本棚に入れています
本棚に追加
第一話 出会い
「そうだ!誰にも邪魔されない、遠い場所へ行こう!」
バスや電車は苦手なため、タクシーを呼ぶことにした。
ここは九州、あまり東へ行き過ぎると、恐ろしい金額と時間になりそうだから、神奈川県の鎌倉市へ行こうと思った。
「すみません!こんにちは。」
「こんにちは!どこまで行きます?」
「結構遠いんですが、鎌倉市までって行けますか?」
「全然行けますよ!結構お値段しますが…」
「よろしくお願いします!」
「君、名前は?」
「九条青龍です。」
「知ってるよ!有名な水泳選手でしょ!」
「はい。でも今は大会にすら出られなくなってしまって…」
「もうすぐ高校生でしょう?そんな軽装備で、1人でなんで遠くに?」
「家を追い出されたんです。大会に出れなくなって、才能がないから、家にいるなと。」
「そんな服じゃ冬は無理だよ…」
「大丈夫です。寒さには強くて、水泳に出会う前も、小さかったから追い出されはしなかったものの、いないモノ扱いで、ときには家に入れてくれないこともありました。」
「そう…大変だったんですね」
「ちょっとまってて」
運転手さんは、コンビニに入っていった。
「お待たせ!」
「いえいえ」
「どうぞ!これ、私の好きな飲み物なんですよ。良かったらどうぞ!」
「ありがとうございます。」
ゴクゴク…
「とっても美味しいです!」
「良かった!」
いままで、お世辞だったり、有名という理由で優しくされたり、チヤホヤされるのが嫌いだった。そんな嘘偽りの、優しさしか貰ってこなかったからだ。なのに、今生まれて初めて、本物の優しさを貰った。心がポカポカする。本物の優しさを知った。
最初のコメントを投稿しよう!