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それは冬を感じさせる、木枯らしの日だった。
私はたまたま、友達に連れられて図書室へ来ていた。
「ねえ、オススメしたい本があるんだけど、見てみる?」
友達はそう、いたずらっぽく笑った。
「そうだね、見てみようかな。」
正直興味なんてなかったけど、私は本を
返さなければならなかったから。
そういう、ついでの気分で頷いた。
「ついてきて!」
彼女はそういうと、本棚の木々を迷いなく進んでいく。
私はその背中を見失わないように進むのが精一杯だった。
「ここだよ!えーっと……うん。
良かった、借りられてない!」
彼女が一冊の本を突き出すのを見て、
顔が引きつるのを感じざる負えななかった。
「か、怪談!?」
私が当時一番嫌いなジャンル。
表紙には、赤いフードを被った少年が、
これまた赤い手帳を持っている。
友達は、満足そうに笑って頷いた。
「そう!怪談!『~~~~~~~』っていうの!」
その屈託のない笑顔を見た途端何も言えなくなって、
勢いに押されて借りてしまったのを覚えている。
でも、今思えばそれでよかったのだろう。
家に帰り、読まずに置いておこう、
そう思っていた。だがなんとなく彼女の笑顔を思い出し、
本のページを開いた。
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