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「雲の上に登って、カミナリを作って、落とす。雷鳴が奏でるゴロゴロピシャーン! の音楽が私は大好きで、だからこのアルバイトを始めたんだけど……」
「あっそうか! カミナリって、迷惑にならないように、夜に降らすから……基本的に夜勤になっちゃうんだ」
「うん。それもある。あとね、私が作るのは『ブルーインクカミナリ』っていう種類のやつなんだよ。他のどのカミナリより鳴る音が綺麗だし、これを落とした土壌だとクラゲキノコがとてもよく育つらしいんだけど……。その代わり、ブルーライト効果っていうのかな? ブルーインクカミナリの光の波長は、私たち人間の脳をピカッて目覚めさせちゃうんだ。そのせいで、バイトが終わって家に帰ってからも、私はうまく寝付けなくて……。それで、ちょっとした寝不足になっていまして」
「あらら……」
ケーキを食べると幸せだけど、太ってしまって幸せじゃなくなる、みたいな話だなあとラズベリーは思った。
とにもかくにも、彼女の親友として、ここで立ち上がらないわけにはいかない。ラズベリーは、ぎゅっと拳を握りしめて、うむ、と頷く。
「とりあえず、私がなんとかしてあげる」
「え、できるの?」
「今夜だけでも、ぐっすり眠ってもらわないとね。ちょうどいいことに……まだ時間はちょっと早いけど……今はすでに夜だし、こうしておしゃべりするのを一旦ストップして、ココナッツには家に帰ってもらう。そうしてベッドに潜って、『うーん目が冴えてるなぁー今日も眠れないなぁー』みたいに悶々とするココナッツの元へ、私が素敵なプレゼントを届けてあげる」
「す、素敵なプレゼントって……?」
「睡眠を促すBGM音楽」
「あ、なるほど。私が、音楽を好きだからか」
その通り、とラズベリーは頷く。
ココナッツは、普通の人よりも音に敏感だ。だからこそ、音の力でココナッツの眠りを助けてあげようと思ったのだ。
「……ところで、」
と、ココナッツが言ったので、ラズベリーは、ん? とそちらを見た。
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