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「ラズベリーは、BGM音楽を持ってるの?」
「これから集めてくるに決まってるじゃん」
「だよね……」
「ちょっとちょっと! もしかして、私の仕事が何なのか忘れたの?」
今日も眠るのは無理かなぁ、という表情を浮かべたココナッツに、ラズベリーは「失礼な!」と憤りを向ける。
しかしココナッツは、「いやいや、ちゃんと知ってるよ」と言った。
「ラズベリーは、『集め屋さん』だもんね」
「なんだ。わかってるじゃん」
「でも、なんだかんだいつも失敗ばっかりのイメージがあって……」
「なんで?!」
ずっと集め屋さん一筋で暮らしてきたのだ。先祖代々続いてきたこの仕事は、幼い頃から手伝いをして、ついに自分が看板を背負うまでになっている。そして商売というものは全て、お客様からの信頼がなければ成り立たないもの。絶対に、ラズベリーはいい仕事をしてきた。そういう自負が、長年の経験と共にある。
やっぱり失礼な! と憤る。
……が。
「この前、私が『雪を集めてきて』って頼んだら、私の元に届く頃にはみんな溶けて水になっていたし……」
「………」
「クリスマスケーキを集めてくるって依頼の時は、遅れに遅れた挙句に、お正月ケーキになっちゃったし……」
「………」
ラズベリーは、ぐうの音も出ずに黙り込んだ。
おっしゃる通りで、としか言いようがない。
しょぼん、と俯く。
「だから」
ココナッツの優しい声が、耳を打つ。
「今回こそは、よろしくお願いするよ?」
バッと顔を上げた。
ホワイトチョコレート色の綺麗な顔が、そこにある。ココナッツは、穏やかに笑っていた。
「う、うん!」
ラズベリーは、真っ赤っかに顔を上気させながら頷いた。
かしこまりましたー! と、言いながら、その場ですっくと立ち上がる。
そして宣言する。
「そうと決まれば、もう出発するね! きっと、ココナッツがよく眠れるようなBGMを集めてきてあげるからね!」
「……ありがとう。……いってらっしゃい」
「行ってきまーす!」
ピュウン、とその場を駆け去る。
そして、ラズベリーは考えた。
どんな音楽を集めてくれば、ココナッツは喜ぶんだろう。
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