眠りの音楽

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「ぶぐっ! 何事!?」 「あ、いや! これはその、ちょっと……っ」 「ラズベリー?」  寝起きのココナッツが、びっくりしたようにこちらを見る。  この目はとても大きく見開かれていて、髪の毛はピンピンとあちらこちらへ跳ねている。  ラズベリーは狼狽してしまって、やっとのことで一言を絞り出した。 「……め、目覚まし音楽をお届けに参りました」 「うん、ありがとうね」  ココナッツが、微笑みながら頷く。あまりの自然さに、少し反応が遅れた。 「……えっ」 「どうしたの?」 「いや、その、ココナッツの昨日の記憶ってちゃんとある……?」 「うん。私の眠るのを助けるための音楽を集めてくるって、そう言ってあっという間にどこかへ飛んでいってしまったよね。ラズベリー」 「……怒らないの? 遅れすぎだって」 「ふふ」  ココナッツは「なに言ってるのよ」と言って笑った。 「どんな音楽を集めてきてくれるのかなーって想像していたら、もうそれだけで心地がよくなって、いつもよりぐっすり眠れたの。それに、眠りすぎて寝坊しそうになった時、ちょうどタイミングよくラズベリーが来て、目覚まし音楽を鳴らしてくれた。 ———これでどうして、怒らなきゃいけないの?」  ラズベリーは目を見開いた。  ココナッツの笑顔が、銀色の太陽みたいに眩しかった。  なんだか泣きそうになりながら、ラズベリーは俯いた。 「……ありがとう。ココナッツ」 「こっちこそ、色々とありがとう。ラズベリー」  お日様が登っていく。外がみるみる明るくなってゆく。  清々しい朝の光の中で、二人は笑っていた。  そんな中、ふいに、ラズベリーは言う。 「徹夜してたら……今とても眠くなっちゃって。この部屋のベッド、借りても……いい、ですか?」 「うん」  おやすみなさい。  ココナッツの優しい声が、鼓膜を揺らす。  ラズベリーは、静かにその目を閉じた。 (完)
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