3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ぶぐっ! 何事!?」
「あ、いや! これはその、ちょっと……っ」
「ラズベリー?」
寝起きのココナッツが、びっくりしたようにこちらを見る。
この目はとても大きく見開かれていて、髪の毛はピンピンとあちらこちらへ跳ねている。
ラズベリーは狼狽してしまって、やっとのことで一言を絞り出した。
「……め、目覚まし音楽をお届けに参りました」
「うん、ありがとうね」
ココナッツが、微笑みながら頷く。あまりの自然さに、少し反応が遅れた。
「……えっ」
「どうしたの?」
「いや、その、ココナッツの昨日の記憶ってちゃんとある……?」
「うん。私の眠るのを助けるための音楽を集めてくるって、そう言ってあっという間にどこかへ飛んでいってしまったよね。ラズベリー」
「……怒らないの? 遅れすぎだって」
「ふふ」
ココナッツは「なに言ってるのよ」と言って笑った。
「どんな音楽を集めてきてくれるのかなーって想像していたら、もうそれだけで心地がよくなって、いつもよりぐっすり眠れたの。それに、眠りすぎて寝坊しそうになった時、ちょうどタイミングよくラズベリーが来て、目覚まし音楽を鳴らしてくれた。
———これでどうして、怒らなきゃいけないの?」
ラズベリーは目を見開いた。
ココナッツの笑顔が、銀色の太陽みたいに眩しかった。
なんだか泣きそうになりながら、ラズベリーは俯いた。
「……ありがとう。ココナッツ」
「こっちこそ、色々とありがとう。ラズベリー」
お日様が登っていく。外がみるみる明るくなってゆく。
清々しい朝の光の中で、二人は笑っていた。
そんな中、ふいに、ラズベリーは言う。
「徹夜してたら……今とても眠くなっちゃって。この部屋のベッド、借りても……いい、ですか?」
「うん」
おやすみなさい。
ココナッツの優しい声が、鼓膜を揺らす。
ラズベリーは、静かにその目を閉じた。
(完)
最初のコメントを投稿しよう!