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ピアニストへ
「え?あ……」
樹里は、あの場面……父親にピアノを習いたいという意思を伝える場面にいた。
言っても仕方がないだろうと樹里は父親に背を向けた。
その時だった。
「樹里。ピアノ、習ってもいいぞ?」
と、樹里の背中に向かってそんな言葉が投げられてきたのだ。
樹里はビックリして父親の方へと振り向いた。
父親の額には……あの記念切手が張り付いていた。
樹里は、その日からピアノのレッスンに打ち込む日々が続いた。
そして遅咲きながら天才子供ピアニストとして活躍するようになった。
樹里のピアノ演奏がCD化され、飛ぶように売れた。
父親も母親も友達も親戚も皆んな、樹里の成功を自分のことのように喜んでくれた。
しかし……。
樹里、本人はうかない顔をしていた。
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